こころの電話

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7月16日~せめてその時だけは…

 夏に吹く熱くて乾いた風を温風と書いて、あつかぜと読みます。

 さて、仏事に関わる仕事をしていると、時折残念な言葉やお話を耳にすることがあります。

 先日、覚照寺のご門徒のご兄弟が、遠方でお亡くなりになり、そちらの葬儀社にお葬儀を依頼されたそうです。

 滞りなくお葬儀が勤まり、出棺して火葬場に着き、ご遺体を火葬の釜にお見送りをした後のことです。

 葬儀社の方が、「それでは、火葬が終わるまでに約二時間ほどかかりますので、近くにお寿司屋さんがありますから、そこでお食事を取ってらしてください」とおっしゃったそうです。

 それを聞いたご遺族のひとりが、「お寿司屋さんですか?このようなときにそれはちょっと…」

 それに対して葬儀社の方は、「そう気にされないでいいですよ、最近は皆さんそうされますよ」

 葬儀社でお弁当が手配できないのか、近くにお寿司屋さん以外の食堂がないのか、どのような理由があるのかわかりませんが、大切な方を亡くし、悲しいお葬儀の後、しかも荼毘に付されている直中に、生き物で、生ものを頂くという感覚。またそれを、最後のお別れのお世話をする葬儀社の方がお勧めになったことを、私はとても残念に思いました。

 少し前までは、身内の大切な人を亡くしたとき、通夜、葬儀、初七日ほどまでは、身近な家族はお精進の食事で過ごしたものです。

 お精進とは、大切な人を失った時に、せめてその時、その期間だけは、同じいのちを持つものの、同じ血を流すもののいのちを奪うことを控えようという、仏教徒の慎みです。

 時代とともに、先人たちが伝えてくださった行為が薄れ、尊い心が失われていくことを残念に思いますが、せめてお葬儀の日当日ぐらいはお精進でお食事をというのは無理なことでしょうか。共々に考えてみたい事柄です。

7月16日~せめてその時だけは…2011年07月16日【148】

7月1日~お念珠を手にかけるとき…

 例年より二十日早く入った梅雨も、例年より二十二日早く明けました。いよいよ本格的な夏到来です。 

 さて、お寺の保育園や幼稚園の職員間では、今、腕輪念珠が流行しています。 最近、鮮やかな色とりどりのタマなども開発されて、ファッションの一部となっているようです。

 多くの若い方々が日常的にお念珠をつけて、少しでも仏教に心を寄せてもらうことはとても有り難いことですが、お念珠を身につけることによって願い事が叶うとか、御守りになるとか、魔除けになるとか、という受け止め方は、お念珠本来の意味とは異なるようです。

 基本的にお念珠のタマは百八つ、人間の煩悩の数だといわれます。一般の方が持つお念珠は略式化されて、五十四個、三十六個、二十七個ほどのタマで作られているのがほとんどです。

 それらの煩悩のタマは一本の糸でつながれて、一番下に房のついたやや大きめのタマがあります。それを「母の珠」と書いて母珠(もしゅ)といい、この母珠が、私たちみんなの親さまである仏さまを表しているそうです。

 つまりお念珠は、仏さまのタマに、私たちの煩悩のタマがつながれていることになります。そして、それをつなぐ糸を経(けい)といいますが、それはインドの言葉でお経を表すそうです。

 あらためてお念珠を手にとって見てみましょう。一つ一つのタマは、私たちが日々、怒ったり、愚痴ったり、欲にかられたり、また悲しんだりする煩悩の一つ一つです。しかし、そんな煩悩を持つ私たちを、仏さまは見過ごすことなく、見捨てることなく、お経の教えでつなぎ、大きな智慧の眼で見守り、慈悲の心で包んでくださっています。

 合掌してお念珠を手にかけるとき、その仏さまのお心を味わいましょう。

7月1日~お念珠を手にかけるとき…2011年07月01日【147】

6月16日~今、やらなばならないことは…。

 「よく雨が降りますね」、最近のお互いの挨拶言葉です。

 さて、唐突ですが、お釈迦さまご在世のころのお話です。

 お釈迦様のお弟子のマールンキャープッタは、とても理屈っぽい人で、人間の存在やこの世界について、哲学的に十分納得できなければ修行に励むことをしなかったそうです。

 お釈迦さまは、そんなマールンキャープッタに対して、「ある人が毒矢で射られたとする。もしもその人が、かけつけた医者に対して、この矢は誰が射たのか、弓はどのようなものか、ツルは何でできているか、矢羽根は、どんな鳥の羽であるか、わからないうちは矢を抜くな」と言ったなら、その人は、それがわかる前に死んでしまうであろう。今必要なのは、まず毒矢を抜いて、急いで手当をすることである」と語り、理屈をこねる前に、まず修行を勧めたといわれます。

 東日本大震災で被災され、避難生活を余儀なくされている方がまだ約九万人おられるのに、政治では菅首相の退陣をめぐり与野党の激しい駆け引きで混乱しています。政治家が今、早急に毒矢を抜き手当をしなければならないことは何でしょうか。

 福島第一原発の復旧作業がなかなか思うようにいきません。多くの方々が強制的に避難を強いられている中で、東京電力や政府を一方的に非難したり、脱原発の声も聞こえます。

 東電や政府が責めを負うのはやむを得ませんが、しかし新聞によると、私たち日本人一世帯の電力の消費量は、ここ四十年間で二,四倍に増えているそうです。この現実を見るとき、今、私たちが日本人が個人的に、あるいは国というレベルで取り組まねばならない課題は何でしょうか。

 今やらねばならないことは何か。

一時的な感情や報道に振り回されることなく、確かな目で物事を見つめ、すみやかに行動できる冷静さを持ちたいものです。

6月16日~今、やらなばならないことは…。2011年06月17日【146】

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