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10月16日〜一番最高のお供え物を…

 秋風を律の風とも言います。邦楽で律の調べは哀愁を帯びているところからそう言われるそうです。

 さて先日、ご主人を亡くされ四七日の法要でお寺に来られた奥さまが、「お仏壇には何をお供えするのがよいのでしょうか」とお尋ねになりました。

 ご主人の中陰の法要期間です。奥さまとしては一番それに相応しいものをと心配されていることがその表情から分かりました。

 一般にお仏壇のお供えというと、お花やお菓子、果物などをされますが、中には故人が好まれた食べ物やお酒、タバコなどを供える方もおられるようです。正しいお供えとは言えませんが、亡くなられた方を偲びそうされる気持ちも分からなくもありません。

 私は、「奥さん、お花やお菓子、果物などをお供えになったらよろしいかと思いますが、それ以上に最高のもの、大切なものをお供えになったらどうでしょう」と言いました。すると奥さまはしばらく唖然としたあと、「最高のもの、大切なものとは何ですか」と聞き返されました。

 それに対し私は、「それは奥さま、あなた自身ですよ」と答えました。

 私たちは、お仏壇に供える花は花屋から買ってきたばかりの一番美しいお花を供えます。お菓子でも果物でも、お店から買ってきたばかりの新鮮でおいしそうなものを供え、決して腐ったものや傷んだものを供えることはありません。

 それは仏さまへの感謝と敬いの心をお供えという形でさせていただくからです。

 すると、仏さまにお参りする私自身はでしょうか。愚痴や不平・不満を抱えたままの私でよいのでしょうか。怒り腹立ちや妬みを抱えたままの私でよいのでしょうか。

 せめて、仏さまの前に座りお参りする時は、心は報恩感謝の思いで、口にナモアミダブツのお念仏を申してお参りすることが、最高のお供えとなるのではないでしょうか。

 今日も仏さまの願いにかなう、最高の自分をお供えしたいものです。

固定リンク | 2018年10月16日【321】

10月1日〜強ければ強いほど…

 台風二十四号が過ぎ去っていきました。久しぶりに大きな台風で、お寺の本堂も強い風にミシミシと音を立てながら必死に踏ん張っているようでした。

 台風と言えば気になるのがその進路です。太平洋で発生し次第に大きくなりながら日本に近づいてきますが、近づくほどにあの扇状の進行方向が気になり出します。

 運動会や身内の結婚式や法事など、大切な行事を予定している人は、どうかその日に台風が来ないでほしいと願うことでしょう。

 農作物を育てている方は、どうか悪い影響が及ばないようにと、台風がそれることを願うことでありましょう。農業を生業とされている方は当然のことです。

 家族や会社で旅行を計画されている方も、どうかその日に来ないように、あるいは台風の進路がその旅行先を避けるように願うことでありましょう。

 台風が強ければ強いほど、進路が自分の所に向かうほどに、その気持ちは強くなります。

 しかし顧みると、その自分の都合によって、台風が自分の所へ来ないように、あるいは他の地域にそれるようにと思う時、人は、その自分以外の人々や地域に心を寄せてはいません。

 運動会や結婚式や法事など、自分が大切な行事を抱えているように、他の地域でも同様の方がおられます。

 自分と同様に農作物を大切に育て、それを生業とされている方が他の地域にもおられます。

 きっと他の地域でも、家族旅行や社員旅行を楽しみにしている方がおられるでしょう。

 自分の都合だけでなく、自分以外の人々や地域に思いを寄せる時、あの扇状の進行方向の見方も考え方も変わってきます。

 そのことをお釈迦さまは、「すべてのことを我が身に引き当てて生活をすることが大切です」と諭されています。

固定リンク | 2018年09月30日【320】

9月16日〜人間の現実のむなしさ悟る

 この季節に力なく漂っている蚊のことを後れ蚊、あるいは哀れ蚊といいます。

 さて、先日仏事の席でAさんとお話しする機会がありました。

 「住職さんとお話をするのは初めてですね」と言われながら、ご自身の近況を話してくださいました。

 Aさんには、30代のご子息がおられ、結婚もして子供さんもいらっしゃるとのことでした。

 当初、働き盛りのご子息夫婦の姿、そしてお孫さんにも恵まれ、ほのぼのとした幸せそうな家庭を連想しながら、そのお話を聞いていましたが、その後、「実はその30代の息子がとても重い病気を患ってしまったのです」とおっしゃいました。その病気はともすると死をも覚悟しなければならない病気です。

 「孫たちのことを思うと、父親の存在がいかに大きいかをしみじみと思います。私はもう何にもいりません。ただ少しでも長く息子と一緒にいたい。少しでも息子がそばにいてくれたらそれでいい」。Aさんは今の心持ちを素直にそうおっしゃいました。

 私はそのお言葉聞いて、少しでもご子息の病状が好転すればと切に思うとともに、お経の一節を思い出しました。

 「私たち人間は、田があれば田に悩み、家があれば家に悩む。金銭、財産、衣食、家財道具など、あればあるにつけて憂いは尽きない。また、田がなければ田をほしいと悩み、家がなければ家をほしいと悩む。なければないにつけて、それらがほしいと悩む」。

 私たちの毎日は、あれがほしいこれがほしい。あれを揃えなければ、これを求めなければの連続で、それが人間の日々の有り様であるが、たとえそれらがそろっても、何も頼りにはならないし、ほんのつかの間のこと、すぐに消え失せてしまうものです。

 Aさんのお言葉は、その人間の現実のむなしさを覚られたお言葉として聞かせていただくことでありました。

固定リンク | 2018年09月15日【319】

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