6月1日~一緒に傘に入りませんか?
梅雨に入り、蒸し暑さがいっそう増してきました。
最近、子どもたちも少なくなって、この季節にあまり見かけなくなったのが、相合い傘です。
私が幼いころは、学校の行き帰りしょっちゅうしていました。傘を持たずに家を出て、途中で雨が降ってきたら、友だちが「一緒に行こう」と入れてくれました。逆に傘を持たない友だちを見かけたら、「おい、入れよ」と言って、一緒に歩いたものです。
しかし、結果的に一つの傘に二人入って歩くのですから、二人とも雨がかかり濡れてしまいます。二人とも濡れてはいるのですが、目的地に着いたとき声をかけたことに後悔の思いはなく、何となく幸せな気持ちになれる、それが相合い傘の思い出です。
それは、そこに「布施…施しの心」があるからです。
雨の中、傘を持たない人がいると、「どうぞ、入りませんか」と声をかけます。しかし、それは人を助けてあげていると思ったら大間違いです。相合い傘は結果的に二人とも濡れてしまうのですから…。
では、なぜ、声をかけるのでしょうか。なぜ、自分の傘に他人を入れるのでしょうか。それは、自分一人だけが濡れずにいるのは心苦しいからです。見て見ぬふりをするのはつらいからです。相合い傘は、その苦しい心が楽になるために、相手の人に頼んで入ってもらうのです。私もあなたと一緒に濡れて歩かせてくださいとお願いしているのです。
だから、入って頂いた方に、「有り難うございました」とお礼を言うのです。つまり、施した方が感謝するのが、仏教の「布施の心」です。
また、「一緒に傘に入りませんか」と誘われて、断るのは間違いです。それを素直に受けるのも布施なのです。
梅雨の季節、身近なところに傘を持たない人はいませんか。そんな人がいたら、ぜひ、「一緒に入りませんか」と声をかけてください。そして一緒に濡れてください。一人で濡れるより、二人で濡れた方がきっと幸せな気持ちになるはずです。
2008年06月02日【73】