6月15日~最後まで心を信じる
あじさいの花が雨に濡れて、鮮やかな色を放っています。
さて、今月初旬、ある裁判の判定が下されました。タレントの風見しんごさんの長女えみるさんの交通事故の裁判です。
えみるさんは、一月十九日、自宅近くの横断歩道を青信号で横断中にトラックにはねられて亡くなりました。わずか十歳。大変痛ましい事故で、悲しいお通夜、お葬儀の模様がテレビで連日報道されていました。
事故の加害者である二十三歳の会社員に下された判決は「禁固二年」でしたが、それに対し加害者は直ちに控訴しました。私は法律には詳しくないので、二年という期間が長いのか短いのかわかりませんが、この直ちに控訴した加害者の行為を残念に思いました。そして、父親である風見しんごさんはこれに対し、「最後まで心を信じます」と述べました。
思えば事故直後、、風見さんはえみるさんを突然失うという極限の悲しみの中で、その別れを素直に受け入れられないと話しながら、「私は加害者を憎まない」と言いました。
大切なわが子の命を一瞬にして奪われた。しかも横断歩道を青信号で渡っていたのにです。怒りや怨みの心が起きないはずがありません。親として娘の命を奪った加害者を殺してしまいたいという心が起きてもおかしくはありません。
しかし、風見さんは、「娘はけんかが嫌いだったんで…」と、えみるさんが望むこと、喜ぶことを考えて、「憎まない」と言いました。そして、この度の控訴にも、「最後まで心を信じます」と言われました。
「怨みは怨みによって鎮まることはない。怨みを忘れて、はじめて怨みは鎮まる」とは、お釈迦様の言葉ですが、私たちの日暮らしの中でこのことがいかに難しいか、自分自身の心を省みればわかります。
しかし、仏さまとなられたお嬢さんの深い願いを受けて、「憎まない」言い、「最後まで心を信じる」と言ったお父様がいたことを、いつまでも深く心に刻みたいと思います。
2007年06月15日【50】