3月1日~大切な話や事柄は若いうちに…
日中はようやく春めいて参りました。
さて、かなり前のお話、私の娘が四歳の頃の出来事です。
私と妻と娘と三人で、鹿児島市内・別院近くの商店街を歩いていた時です。
娘が私たちの手を振り払い、途中で立ち止まり、私たちと一緒に歩こうとしません。いったいどうしたのかと娘の様子をよく伺うと、お寺の門前町の仏壇店に並ぶ販売用のお仏壇一つ一つに合掌していたのでありました。
毎日、家のお仏壇に親子そろってお参りをしていたので、お仏壇を見ると条件反射でそうしたのでありましょう。その姿を見て、まことにほのぼのとした気持ちになりましたが、同時に、理屈が分からない幼い子どもはまず、形から入ることの大切さを教えられたことを記憶しています。
逆に先般、お父様を亡くされた六十代の男性が、「父が生きていた時は、口うるさくて反発ばかりしていましたが、この年になってあらためて思い返せば、父は若い私の将来を案じて大切なことを言ってくれていたのだと、しみじみと思います」と話されていました。
言われた時には素直に受け入れられなかったことが、時間が経過し、様々な経験をして、なるほど言われたことはそういうことだったのかと、受け入れられるようになったのです。
昔親から言われたことが、様々なご縁をいただいたことによって、やっと身についたと言えるかもしれません。親の意見と冷や酒は後から効くとはこのことでしょう。
そうすると、大切な話や事柄は、幼い子どもたちには形から、大人は若いうちにたくさん聞いておくことが大事ということになります。
仏さまにお参りする習慣も、仏さまのお話も、早めに慣れ親しみ、たくさん聞いておくことが必要です。ご門徒の男性がおっしゃるように、聞いた時にはあまりピンとこなかったことが、人生が深まるごとにその教えが心と体に染みいってくるからです。
2018年03月01日【304】