12月1日~少しだけ慈しみの心を…
今年も残すところあと一カ月。年を重ねるごとに、一年過ぎ去るのが早く感じます。
さて先日、テレビで九州の大型テーマパークが、死んだ魚五千匹を氷漬けにしたスケートリンクをオープンしようとしたところ、「残酷」、「かわいそう」といった批判が集まり、急きょ閉鎖されたというニュースがありました。
「まるで海の上を滑っているような感覚で楽しめる」と、飛び付くような話題性、意外性を考えた上での企画だったのでしょうが、氷漬けのリンクの製作過程を伝えた同園のフェイスブックで、口が開いた魚の写真に、「お、おぼれるー」「息、出来なくなってきたよ」とセリフまで付けて紹介するなど、ニュースを通して知る限りはあまり感心できる内容ではありませんでした。
またマスコミの取材に対しても、魚は食用として売り物にならない死んだ規格外の魚を市場から仕入れたとのことですが、規格外であろうが規格内であろうが、命を持っていたことに変わりなく、その魚たちを氷漬けにしたリンクを人間が滑って楽しむことに、痛みや悲しみを感じた方も少なくはないと思います。
本格的な冬に向かって、お客さんを集めるために競争の激しいお仕事で、ご苦労も多いことでしょうが、どうか共々に、少しだけ慈しみの心を持ちましょう。命を哀れむ心を持ちましょう。そのことをあらためて教えられた心に重いニュースでした。
小さな魚たちに、一つ一つの尊いいのちを見た詩人・金子みすずさんの詩を味わいます。
朝焼小焼だ 大漁だ
大羽鰮(いわし)の 大漁だ。
浜は祭りの ようだけど
海のなかでは 何萬(まん)の
鰮のとむらい するだろう。
2016年11月29日【274】