11月16日~凡夫の自覚ということ
紅葉の少ない鹿児島の山々も所々色づいてきたようです。
さて、連日マスコミを騒がせてきたアメリカの大統領選挙も、大方の予想を覆しトランプ氏が勝利しました。
偽りの理由をもって起こしたイラク戦争によって、多くの若者を失った大国アメリカの失望感。
人や物やお金が国際社会を自由に行き来するグローバル化によって、広がりすぎた所得の格差。
戦争も、教育も、医療も、福祉もすべてビジネス。利益優先によって生じた人々の社会的な不安などが、一挙にトランプ氏への支持に動いたような気がします。
トランプ氏の当選によって、アメリカもまだ混乱の中にありますが、日本においてはTPPの問題や東アジアの安全保障の問題も大変心配されるところです。
この度のアメリカ大統領選挙にかかわる混乱のニュースを見るにつけ、いかに人間が相手の立場に立って物事を考えることが難しいか思い知らされます。
また自由という名の下に、人間の果てしない欲望が人々の間に多くの溝を作ってしまったような思いもいたします。
親鸞聖人は、凡夫の自覚ということを私たちに教えて下さいました。
凡夫とは、仏さまの眼に照らされた人間の本当の姿、私自身のことを言います。
その姿とは、怒りや腹立ち、ねたみや嫉む心があふれていて、臨終の時までその心は絶えることはない。
凡夫とは、仏さまのまことの教えによって、人間の心根の限界に気づかされた言葉であります。
決してお隣の国のことだけではない。私自身と私たちの社会の問題であります。
親鸞さまは、「人間社会には嘘や偽りが多く、まこと真実といえるものは念仏しかありません」とも言われます。
これは、仏さまの智慧と慈悲をより所にした生き方こそ、まことの生き方であると言い換えることができましょう。
2016年11月16日【273】