3月16日~布施の心で「有り難う」
「暑さ寒さも彼岸まで」とはよく言ったもので、春彼岸を間近にようやく暖かさが感じられるようになりました。
さて、今年もお彼岸のご法要が勤まりますが、お彼岸とはお浄土、つまり悟りの世界を指し、正式には「到彼岸」といい、仏さまのみ教えを聞き開き実践して悟りの世界に到ることを言います。
私たちの浄土真宗では、この季候のよい時期にすすんでお寺に参り、お念仏のみ教えを聴聞し、仏さまの信心をいただくことを大切にします。
仏教を開かれたお釈迦さまは、私たちが悟りの世界に到達する実践を六つに分けて勧められますが、その中の一つに布施行があります。
布施とは、お金や品物を施すことを言います。またそれだけでなく、体を使ってお手伝いをしたり、周囲の人にあたたかな心で、笑顔で、優しい言葉で接することも相手に対する施しです。
しかし、この布施の場合、施された相手がお礼を言う、言わないにかかわらず、施した方がお礼を言います。
施した方がお礼を言うとはおかしな話ですが、なぜならば、布施は仏の悟りに近づくための行であり、自分の持ち物への執着や物欲から離れるための実践だからです。
相手に貰ってもらえるからこそ、その行を勤められるわけですから、もらって下さって有り難うと、お礼を言うわけです。
東日本大震災から一年が経った今も、私たちは身近なところで、義援金などの募金をさせていただく機会がありますが、これも仏教では布施の一つです。
そこに、「被災者の皆さんを助けた」「自分はよいことをしたんだ」と少しでも思うならば、誠に申し訳ないことであります。
ひとえに被災地の皆さんに心を寄せて、僅かですがどうぞ役立てて下さいと、お布施をさせていただく、そのような素直な姿勢が大切であろうと思います。
2012年03月19日【164】