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9月16日~仏さまの教えをただひたすら求めて

 中秋の名月も過ぎて、秋気清らかな季節です。

 真夏には、早朝のお勤めから汗だくになっていたのですが、最近は次第に涼しくなってきました。

 さて先日、NHKBS放送で偶然、昔懐かしいシルクロードの放送がありました。

 シルクロードは、紀元前二世紀から十五世紀半ばまで、東西の経済・文化・政治・宗教の交流に中心的な役割を果たした交易路で、この名称は中国で生産される絹織物の貿易に由来しているそうですが、番組は、その長い長い道のりをNHKの撮影隊が取材したドキュメント番組です。

 その放送を見ながら、昔読んだ本の中にあった念仏者・浅田正作の詩を思い出しました。

 「立てば罪 座れば悪 この果てない苦悩の砂漠を 西へ西へ向かった人があるのだ 今はひたすら このことを信じて歩むしかない」

 シルクロードと言えば聞こえはいいですが、実際は果てしなく続く砂漠に吹く砂嵐。日差しが照り続ける過酷な道のりで、昔、中国の僧侶方は、仏さま教えをただひたすら求めて西へ西へと向かいました。

 無事インドまでたどり着いた僧侶もいましたが、途中で方角がわからなくなり水食料も絶えて、砂漠で朽ち果てて骨と化した方も多くいたと聞きます。仏の教えを求めて後に続く人々は、この人骨を目印に西に向かったと言われ、シルクロードは別名「骨の道」、「ボーンロード」と言われるそうです。

 朝のお勤めやご法事で毎日、お経を読むわけですが、私たちの手元にお経をあることは、ひとえに仏の教えを求めて、この過酷な道のりに向かわれた数多の僧侶方のお陰と言うしかありません。

 老、病、死を抱え、思い通りに行かぬこの人生は、果てない苦悩の砂漠です。 この苦悩を超えて生きぬく道こそ、仏さまの教えであります。

 日々その経典を拝読できることに感謝しつつ、仏さまの道を求めてコツコツと歩み続けるしかありません。

9月16日~仏さまの教えをただひたすら求めて2022年09月17日【412】

9月1日~あなたはあなたのままで…

 九月一日は関東大震災があった日で防災の日。強い台風にも用心しましょう。

 さて、八月二十四日、鹿児島市出身で京セラの名誉会長の稲盛和夫さんが九十歳でお亡くなりになりました。

 稲森さんを偲んで、以前、このテレホン法話で紹介した稲森さんの幼い頃の思い出話をあらためて紹介します。

 稲森さんは、鹿児島の浄土真宗にご縁のある家庭で育たれました。稲森さんの幼い頃はあの隠れ念仏の習わしが残っており、日没後の暗い山道を、提灯の明かりを頼りに、お父様の後を必死でついて行った思い出があるそうです。

 登った先には一軒の家があり、押し入れの中に立派な仏壇が置かれていて、その前でお坊さんがお経を唱えており、その後ろに正座をさせられたそうです。

 読経が終わると、一人ずつ仏さまにお線香を上げて拝むように教えられ、その時、お坊さんは稲森さんに、「これから毎日、『なんまん、なんまん、ありがとう』と言って、仏さんに感謝しなさい。生きている間、それだけすればよろしい」と言われたそうです。

 稲森さんは、「それは私にとって、最初の宗教体験とも言える印象深い経験でしたが、その時に教えられた感謝することの大切さは、私の心の原型を作ったように思います。そして実際、いまでもことあるごとに、『なんまん、なんまん、ありがとう』という感謝のフレーズが無意識のうちに口をついて出たり、耳の奥によみがえってくるのです」とおっしゃっています。

 「なんまん」とは「南無阿弥陀仏」のことで、「いつでも、どこでも、どのような時でも、あなたをそのまま救い取る。だからあなたはあなたのままで精いっぱい人生を生きぬきなさい」との阿弥陀如来の呼び声です。

 稲森さんは、その呼び声のままに、常に前向きに努力を重ねられ、多くの方々のために、稲森さんらしく精いっぱい生きぬかれました。

 ご往生に際し心から、「なんまん なんまん ありがとう」とお念仏を申します。

9月1日~あなたはあなたのままで…2022年08月31日【411】

8月16日~早くお迎えに来て!

 空の上では雷がゴロゴロ。お盆の終わりを告げているようです。

 お盆の季節になると、昔、勤め先のお寺で出会ったお婆ちゃんのことを思い出します。

 そのお婆ちゃんとはご主人の一周忌を縁として出会いました。

 お勤めを終えた私に、「お坊さん、私は主人を亡くして寂しくて、もう生きる元気がありません。早くお迎えに来てほしいです」と、わりと元気そうにおっしゃいます。でも心の中は本当にそうなのでしょう。

 私は、「お婆ちゃん、お寂しいかもしれませんが、その時が来れば、必ず阿弥陀さまの方からお迎えに来てくださいます。だからそれまで元気を出して、楽しく過ごしましょうよ」と、励ます思いでお声かけをしました。

 それからまたしばらくして、お婆ちゃんのご自宅に行くご縁があり、たまたま奥のお部屋が少し見えました。

 するとそのお部屋には、最近求めたような最新式の足踏み健康器具や健康食品、漢方薬などの箱がたくさん並んでいました。

 それを見た私は、安心とともに、少しおかしくなりました。「もう生きる元気がない」「早くお迎えに来てほしい」と本当に思っているのであれば、足踏み健康器具や健康食品、お薬は必要ないはずです。でも健康器具を使用されたり、お薬を飲んでおられるのであれば、元気でありたい。病気にはなりたくないという思いがあるからでしょう。

 あらためて私はお婆ちゃんに言いました。

 「お婆ちゃん、阿弥陀さまのお姿は立っておられるでしょう。しかも横から見ると前かがみになっておられるのですよ。あれは、いつでも、どこでも、どのような時でも、阿弥陀さまの方から私たちを救おうとはたらき通し、願い通しのお姿なんですよ。だから早くお迎えになんて言わないで、阿弥陀さまにお任せしておけば大丈夫ですよ」

 お婆ちゃんは、にこやかに笑っておられました。

8月16日~早くお迎えに来て!2022年08月16日【410】

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