7月1日~どちらから先に助けるか?
一年で一番昼が長く、夜が短くなる季節です。
さて、七月に入り水難事故が心配される季節ですが、これはたとえ話なのでお許し下さい。
ある大学で教授方を対象にした講演会があり、講師である禅宗のお坊さんが会場に向かって問題提起をされたそうです。
大きな池があります。その池であなたのお母さんと奥さんが溺れています。さて、あなたは、どちらを先に助けますか。
聴衆は皆、大学の先生ばかり、様々な答えが出ました。
「儒教の教えによると、子は親を敬うのが大事、だからまず母親を助けるべきだ」
「いや、キリスト教の教えからすれば愛が基本、だから愛する妻から助けるべきでしょう」
様々な意見が出て、答えは一つにまとまりません。
講師のお坊さんは、「早く答えを出さないと、二人とも溺れてしまいますよ」とジョークを言います。
それに対して教授の一人が、「では、和尚さんであれば、どちらを先に助けますか。答えて下さい」と質問しました。
「わしか、わしならば、そりゃ自分の近くにいるものから助ける」と、答えました。
私たちは、すぐに物事や人に対してレッテルを貼りがちです。溺れている人を、「母」だからとか、「妻」だからとか、理屈をつけて分け隔てをすることはよくないことです。
仏さまのまなざしは常に平等です。ですからもし人が溺れたときは、近くにいる人から手をさしのべれる。それだけです。
このお話は、自分にとっていいとか悪いとか、どちらが先とか後とか、損とか得とか、自分を中心にした、偏った人間の物の見方を諭したお話です。
2012年07月03日【171】