6月1日~人間、結局はひとり
六月言えばジューンブライド、直訳すれば六月の花嫁。六月に結婚した花嫁は幸せになるというヨーロッパの言い伝えです。
数日前、その結婚披露宴に招かれ出席しました。
たくさんの方々に祝福されての披露宴でしたが、僧侶である新郎側の主賓は、元龍谷大学学長の信楽俊麿先生でした。
信楽先生は、新たな人生をスタートをする二人へのはなむけの言葉として、「結局は人間はひとりということです」とおっしゃいました。
世間一般では、結婚というお祝いの場において、「終わる、切れる、破れる、分かれる、戻る」という言葉を嫌いますが、そういう場において、「人間、結局はひとり」とい言われたのです。会場が一瞬シンと凍ったような雰囲気になりました。
続けて先生は、「いくら結婚しても見る夢は違うし、考えも異なる。その中でそれぞれが悩みや苦しみ悲しみを抱えていかなければならないのが人間の本当の姿。ひとりでそれらを背負っていかねばならないのが本当の人間の姿です。だからこそ、あなた方は今、目の前の人を選んだのです。ひとりで背負っていかねばならない悩みや苦しみを、目の前にいる人と共に分かち合い、共に乗り越えていくために、今日この日を迎えたのです」とおっしゃいました。
仏道は、「人間のいのちの現実を直視することから始まる」と言われますが、まさしく先生は、そのことを祝福の直中にあるお二人に話されたのです。
お経の中に、「人は、ひとりで生まれ、ひとりで死に、ひとりで去り、ひとりで来る」という言葉がありますが、二人の出会いを祝福する日だからこそ、二人の人生の新たなスタートを誓う日だからこそ、あらためて人間の厳しい現実を互いに見つめることを諭されたのです。
「人間、結局はひとり」。そのことを真剣に見つめるとき、目の前にある一つ一つの出会いが、あらためて輝いてくる世界があるのではないでしょうか。
(注:文中の信楽先生のお話は聞き取りで、一つ一つの言葉は正確でないことを申し添えます)
2011年06月01日【145】