5月16日~「後生の一大事」という言葉
急に暖かくなったり、急に寒くなったり、朝夕の気温の大きな差に戸惑う日々です。
さて、東日本大震災から約二ヵ月が経過しました。この震災でお亡くなりになった方、行方のわからない方々の数も次第に明確になり、五月中旬の時点で、死者が一四,八七七名、行方不明者が九,九六〇名となりました。追悼の思いと共に、誠に甚大な被害をもたらした大地震、大津波であったことを、あらためて感じます。
この犠牲者の皆さまに思いをはせるとき、私はあらためて、「後生の一大事」という言葉をいただくのです。後生とは後ろという字に生きると書いて、この世のいのちが尽きた後に受ける「いのちの世界」のことです。
この私がやがて受けるであろう「いのちの世界」を一番の大事として、人生を生きることを「後生の一大事」というのです。
西本願寺の大谷光眞ご門主様は、著書の中で、「後生の一大事は日常生活を超えたところにあるいのちの問題を、私たちに突きつけた言葉です」とおっしゃっています。
私たち一人ひとり、いついかなるときに、この娑婆の縁が尽きるかはかることができません。とても厳しいいのちの現実です。
その時、私はどこへ行くのか、地獄へ落ちるのか、それとも極楽浄土に往生するのか、このことを聞き訪ね、解決することが、私のいのちの一番大事な問題だということです。
私のいのちの問題、特に死について、目をそらすことなく考えることが、実は自分の生きる意味をしっかりと見つめることにつながる。これが「後生の一大事」ということです。
ご門主様は、「死について考えることで、その人の生はきっと深く充実したものになるはず」とご著書の中で、おっしゃっています。
2011年05月17日【144】