4月1日~行いによって初めて見える。
春のお彼岸が過ぎたというのに、朝夕はまだ冷たさが残ります。
さて、先月十一日の東日本大震災発生から既に三週間が経ちました。三月末の時点で死者、行方不明者が計二万七六〇三人、また現在も十七万人以上の人が避難所での生活を送っておられ、さらに福島第一原発事故の復旧作業も大変心配されるところです。
この大震災発生より、テレビでコマーシャルを流す業者が自粛したため、その代わりしきりに流されたのが、ACという民間の広告ネットワークのCMでした。
その中でひときわ人々の注目を集めたのが、「心は誰にも見えないけれど、心遣いは見える。思いは見えないけれど、思いやりは誰にも見える」という詩です。 電車の中でお年寄りにイスを譲るシーンや、階段を上るお年寄りを若者がやさしく寄り添い手伝うシーンで流れます。
これは詩人の宮澤章二さんの詩だそうですが、本当はこのあとに、「あたたかい心も、やさしい思いも、行いによってはじめて見える」という言葉があるそうです。
宮澤さんはこの詩を通して、思いを行為に表すことの大切さを述べておられますが、仏教の開祖であるお釈迦さまも今から二,五〇〇年前に同様のことをおっしゃっています。
「人は、行為によって卑しい人ともなり、行為によって貴き人ともなる」
この大震災によって、多くの尊い命が失われ、家族や友人、家や町や財産を一瞬のうちになくし、悲嘆にくれた多くの方々が今も苦しみの中にあります。
日常を顧みるとき、自分自身、貴き人になることは難しく思いますが、でも、被災地に心を寄せるとき、その思いを行いに表すことは可能です。
家庭の中では節電節約、また義援金活動や物資の送付、また子どもを含めて家族で何ができるか話し合うことも大切でしょう。一人ひとりでできるところから、その心を行為に、形に表しましょう。
2011年04月02日【141】