2月15日~私が死んだらどうなるのか…。
冷たい北風が衣の袖から入り込んできます。
さて、一月のテレホン法話で、「たったひとつの命だから」という本をご紹介したら、メールや電話をいただきました。今回も、その本の中からのお話です。 たつやくんという男の子の、お母さんからのお便りです。
六年前、五年生だった息子のたつやは、大けがをして入院しました。ある日、同じ年の女の子が隣の部屋に入院してきて、二人はすぐに仲良しになりました。
その女の子は、病気は貧血と聞いていましたが、点滴や脳波の検査を怖がる息子を、「がまんせんね、すぐよくなるけん」と言いながら、いつも励ましてくれました。そして、本を読んでくれたり、描いた絵をプレゼントしてくれたり、本当に賢い女の子でした。
ある日のこと、その女の子は無菌室に移されました。その時初めて彼女が違う病気であることを知りました。息子は、毎日、ガラス越しに面会に行きました。女の子の抗がん剤治療が始まりましたが、それでも女の子は、「すぐよくなるから、注射と退屈な病院生活をがまんしようね」と、息子を励ましてくれました。
息子の退院の日、同じ日に、女の子の様態が急変し、そして亡くなりました。とても、息子にそのことを告げることはできませんでした。
しばらくしてから、女の子のお母さんから手紙をもらいました。女の子から息子にあてた手紙でした。
「たつや君、友だちになってくれて有り難う。一緒に退院しようねって、約束したけど、破ってごめんね。きびしいことばかり言ってごめんね。私が死んだら私はどうなるのか、こわいです。お父さんとお母さんがいないところへ行きたくない。でもね、えんぴつ持てなくなってきた。病気がひどくなってきた。死ぬのが恐いです。さようなら、さようなら」
このお母さんは、この手紙をたつやくんにも、誰にも見せずに大切にしまってきました。
明るいところしか見せなかった彼女は、本当は泣いていたのです。どんな思いでこの手紙を書いたのか…、いつ書いたのか…。
この手紙は、私に「後生の一大事」を、問いかけています。
2008年02月17日【66】