8月15日~最善のご供養の姿を~
私たち僧侶にとって、暑さとの戦いのお盆が過ぎました。
今年も、初盆を迎えられたたくさんのご家庭にお参りに行きました。
その中で、Cさん宅に参りましたら、五十歳前後のCさんが、お仏壇を指さして恥ずかしそうに、「お仏壇の掃除をしました。お花も買ってきて飾りました。お菓子や果物も供えました。初盆のちょうちんも飾りました。これで母は喜んでくれるでしょうか。いいご供養になるでしょうか」と、おっしゃいました。
Cさんのお母さまの初盆で、Cさんと奥さまは、慣れない中にも亡くなったお母さんに精いっぱいのご供養をしようとされているのですが、最善の方法が何かを私に聞かれたのです。
お仏壇を見ると、きれいな花で飾られ、お供物が供えられ、私からお仏壇のお飾りについて何も言うことはありませんでした。
そこで私は、「仏さまとなられたお母さんにとって、一番のご供養は、あなたや奥さま、子どもたちがいっしょに手を合わせて、お念仏を申すことですよ」と、一番大切なことを申しました。
私たちの手は、毎日の生活の中で、ともすると自分の思いで他人を押しのけようとする手です。自分の好むものを手中に入れようとする手です。憤りを感じるとコブシを握ることさえあります。
私たちの口からは、ともすると愚痴や不平不満、意に添わないことがあると他人の悪口がこぼれ出ます。
仏となられた方は、あとに残る縁ある者たちの、そのような姿を決して望んではおられませんし、願ってもおられません。
あとに残る者がいっしょに手を合わせ、報恩感謝の南無阿弥陀仏のお念仏を称える姿こそ、仏となられた方が望まれる最高の姿であり、最善のご供養になることを私はお話ししました。
その後、私はお勤めに入りましたが、Cさん宅は、お念仏の声が高らかに響いていました。
2007年08月15日【54】