11月1日~大切な日だからこそお経を…
錦を飾った木々が誇らしく輝く季節です。
さて先日、お寺のご法座によくお参りになるご門徒が、「住職さん、親の命日にお経を読んでいただく意味が初めて分かりました。有り難いことですね」と、声をかけてくださいました。
お話をよく聞くと、この方は、親の命日に法事を勤める時にお経は亡くなった親にあげるものだと思っておられたようです。
無理もありません。ご法事にはお経が必ず勤められますし、亡くなられた親しい方、ご恩を受けた方に対し感謝の思いで読経の功徳を差し上げたいという遺族としての心はとても大切です。
しかし、お寺のご法座に通い、お聴聞を重ね、もう一歩踏み込んで仏さまのみ教えに耳を傾けると、仏さまは私たち人間の思いを超えてさらに大切なことを説いてくださっていることに気づかされたとおっしゃるのです。
お経はすべて漢文で書いてあるので分かりづらいのですが、その中には阿弥陀さまがその慈悲と智慧をもって、「あなたを間違いなく救う」という誓いと願いが説かれているのです。
そして、先に亡くなられたご先祖方は皆、その真実の願いによってお浄土に救われているので、後に残る方々は安心して、ただ今、読まれるお経の言葉を心にしっかりといただきなさいと勧めてくださっているのです。
私が「亡くなった方のためにお経を…」と思っていたことが、それに先立って、亡き方が阿弥陀さまと共に「あなたを必ず救う」からお経の真実の言葉をいただきなさいと、私のために願っていてくださるのです。「お経が有り難い」とはこのことです。
親しき方の命日はとても大切な日です。その大切な日だからこそお経を拝読するのです。そこには先に逝った人も、後に残るこの私も、阿弥陀さまに必ず救われるという真実の言葉が説かれているのです。
2020年11月01日【367】