8月16日~アタリマエでない日々の中で…
暑い夏、時折どこかから吹いてくる涼しい風を、だれかが「極楽のあまり風」と言いました。阿弥陀さまに吹かせて下さいとお願いしたい毎日です。
さて、今月十日から2020年高校野球交流試合が阪神甲子園球場で開催されました。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、春の選抜高校野球大会が中止され、出場が決まっていた全三十二校の球児たちに甲子園の土を踏ませてあげたいという思いから、高野連が招待し開催されたものです。
その開会式での高野連の八田会長の挨拶は印象深いものでした。
会長は参加球児たちに向かって、「皆さんは『有り難う』の反対語をご存じでしょうか」と問いかけた後、「有り難うの反対語は『アタリマエ』です。これまでの周りの手助けは奇跡とも言うべきもの。そのために、感謝の気持ちをアタリマエではなかったという言葉に込めるのです。感謝の気持ちを忘れず、甲子園球児という誇りを胸に、長い人生行路を歩んで下さい」と述べました。
「有り難う」の反対語は「アタリマエ」。
思い返せばほんの数ヵ月前までは、アタリマエのように東京オリンピックもあると思っていました。アタリマエのように春と夏の甲子園もやってくると思っていました。アタリマエのようにお盆でたくさんの帰省もあると思っていました。
そして今年の夏もいつものように、アタリマエに多くの家族が旅行に行き、楽しい思い出を作ることができると思っていました。
「有り難う」とは「有ることが難しい」と書きます。今日三度のご飯を食べることができて、学校に行ったりお仕事ができたり、一日を無事に過ごすことができるのも多くの条件がそろってのこと。その不思議に対する感謝の言葉が「有り難う」です。
残念なことに人間は、自分の身にアタリマエでなくなった事が起きたときに、初めてアタリマエの有り難さに気づかされます。
アタリマエではない日々の中で、アタリマエの有り難さを深く心に刻みたいと思います。
2020年08月17日【362】