4月1日~感謝とともに「庶民栄誉笑」を…
毎日、新型コロナウイルス感染の情報が伝えられますが、三月二十九日の夜、タレントの志村けんさんが感染によって亡くなられたとの報道がありました。
体の不調を訴えられてからわずか半月で急逝されるという報道に大変驚くとともに、このウイルスの怖さが未だ実感として受け止められない私たちに、緊張をもたらします。
志村さんと言えば、私の世代は皆「八時だよ、全員集合」です。親から見るなと言われても、見ずにはおれない楽しい番組でした。生放送で、大がかりな舞台仕掛けのコントを、ハラハラドキドキしながら食い入るように見ていたことを思い出します。
また、「アイーン」とか、「イッチョメ、イッチョメ、ワオ」とか、「カラスの勝手でしょ」などのギャグ。「変なおじさん」とか、「バカ殿様」などのキャラクター。「ヒゲダンス」の踊りなど、ギャグからコミカルな動きにいたるまで幅広い芸は、日本のみならず世界まで多くの人々に笑いを届けてくれました。
志村さんの笑いの特徴は、世代を超えたわけへだてのない庶民性にあるような気がします。
幼い子どもから大人まで、誰でもがついついまねをしてしまうギャグ。街角のどこかにいそうな酔っ払いやちょっと変わったおじさんおばさん。誰もが心の中でアタリマエと思っている事柄を、リズミカルにひっくり返す巧みな芸。
それは、志村さんの庶民感覚と、たぐいまれなる鋭い人間観察力と研究から生まれたものであり、だからこそ、その笑いはどんな世代にも、どのような人にも通じたのだと思います。
まことの教えを説くお釈迦さまも、親鸞さまも、志村さんの芸を見ればきっとお笑いになったことでありましょう。
志村さんのご逝去を心から残念に思うとともに、私たちに和やかなひとときを届けてくださったことに感謝いたします。
そして、心の中で「庶民栄誉笑」をそっとお届けしたいと思います。そのしょうはほうびの「賞」ではなく、やはりお笑いの「笑」でありましょう。
2020年04月01日【354】