10月15日~ 答えは明快で簡単なのに…
「天高く馬肥ゆる秋」です。青く澄み渡った大空が広がり、天が高く見えます。お米や梨、柿など果物がたくさん穫れます。食欲の秋ですので、おいしければ食も進み、馬に限らず人間も肥えてしまいます。
よくお寺に来られるAさんもそうです。若坊守と話をよくされますが、「最近太り気味で困るのよ。痩せようと努力するんだけど、しょっちゅうお菓子を下さるから…」、「痩せるお茶を買ったんだけど、値段が高い割になかなか効かなくて…」、「毎日毎日忙しくて身体を動かす時間がないのよ」など、ダイエットに努力されていますが、効果がなかなか出ないようです。
私の友人のNさんは、禁煙に幾度となく挑戦しますが、これもなかなか難しいようです。「たばこを止めるとイライラして仕事が手につかない」とか、「たばこを止めると太ってくるからまずいな」とか、「車を運転しているときは、息抜きにたばこが必要だ」とか、いつもこのようなことを言っています。
落語家の露の新治さんは、落語でこう言われます。「ダイエットのこつを教えます。それは食べんことです」。何と明快な答えでしょうか。食べずに身体を動かせば痩せるのに、私たちは「お菓子を貰っちゃったから」とか、「忙しくて時間がないから」と、言い訳をします。
露のさんは、「禁煙のこつを教えます。それは吸わんことです」とおっしゃいます。これも明快です。吸えば喫煙、吸わなきゃ禁煙、これだけのことです。なのに私たちは、イライラして仕事が出来ない、たばこを吸わなきゃ太るなどと、言い訳をします。
ダイエットは食べないこと、禁煙は吸わないこと。答えはとても明快で簡単なのに、あれこれ言い訳をして真剣になれない自分をごまかしたり、つまらない持論を称えているのが私たちの姿かもしれません。
親鸞聖人も、「本願を信じ念仏申さば仏となる」と、往生成仏の道を実に明快におっしゃいました。阿弥陀如来の本願を信じて、聴聞を重ね、南無阿弥陀仏のお念仏を申すだけで、いかなる人も往生し仏とならせていただく。煩悩をかかえた私たちが往生し、仏となる道はこれより外にないと、親鸞さまは、わが身を通して明快に諭されたのです。
2006年10月15日【34】