10月16日~一番最高のお供え物を…
秋風を律の風とも言います。邦楽で律の調べは哀愁を帯びているところからそう言われるそうです。
さて先日、ご主人を亡くされ四七日の法要でお寺に来られた奥さまが、「お仏壇には何をお供えするのがよいのでしょうか」とお尋ねになりました。
ご主人の中陰の法要期間です。奥さまとしては一番それに相応しいものをと心配されていることがその表情から分かりました。
一般にお仏壇のお供えというと、お花やお菓子、果物などをされますが、中には故人が好まれた食べ物やお酒、タバコなどを供える方もおられるようです。正しいお供えとは言えませんが、亡くなられた方を偲びそうされる気持ちも分からなくもありません。
私は、「奥さん、お花やお菓子、果物などをお供えになったらよろしいかと思いますが、それ以上に最高のもの、大切なものをお供えになったらどうでしょう」と言いました。すると奥さまはしばらく唖然としたあと、「最高のもの、大切なものとは何ですか」と聞き返されました。
それに対し私は、「それは奥さま、あなた自身ですよ」と答えました。
私たちは、お仏壇に供える花は花屋から買ってきたばかりの一番美しいお花を供えます。お菓子でも果物でも、お店から買ってきたばかりの新鮮でおいしそうなものを供え、決して腐ったものや傷んだものを供えることはありません。
それは仏さまへの感謝と敬いの心をお供えという形でさせていただくからです。
すると、仏さまにお参りする私自身はでしょうか。愚痴や不平・不満を抱えたままの私でよいのでしょうか。怒り腹立ちや妬みを抱えたままの私でよいのでしょうか。
せめて、仏さまの前に座りお参りする時は、心は報恩感謝の思いで、口にナモアミダブツのお念仏を申してお参りすることが、最高のお供えとなるのではないでしょうか。
今日も仏さまの願いにかなう、最高の自分をお供えしたいものです。
2018年10月16日【321】