5月16日~手を合わさずにはおれない
日中は次第に暑くなってきましたが、朝夕は時折大変冷え込むことがあります。
さて、テレビでは毎日多くのドラマが放送されており、その中で、食事の場面も多く出てきます。
そこでは、家族がそろって合掌して「いただきます」と言って食べ始めるシーンもあれば、手を合わさずに食べ始めるシーンもあります。
テレビドラマは、台本にしたがってプロデューサーを中心に役者が作っていきますから、そこにはプロデューサーの何らかの意志がはたらいでいるのでありましょう。
一方で先般、養豚のお仕事をされるお宅をレポーターが取材する番組があり、その中で、養豚業のご主人が、「ここで養っている豚は生まれて六ヵ月ほどすれば、皆出荷されていくのですよ」と言われましたが、その言葉を聞いて驚きました。生まれてわずか六ヵ月で、私たちの食事のために出荷されるというのです。
鶏は生まれて約四ヵ月。牛はと言うと、生まれてから約八ヵ月は家畜農家で育てられ、二八〇㎏くらいになるとセリにかけられ飼育農家に引き取られ、約一年半ほどして適度な体重になれば出荷されるそうです。牛も二年足らずでお肉となるのです。
言い換えれば、私たち人間に食べられるためだけに生まれてきて、飼育されて、わずかな日数を過ごし、私たちの命を支えるためにお肉となるわけです。
あらためてそのことを思うとき、手を合わす、合わさないではなく、手を合わさずにはおれないのではないでしょうか。
飽食の時代と言われて久しくなりますが、世のなかにはたくさんの食べ物があふれて、そこにある一つ一つの命が見えにくい時代となりました。しかし、私たちのいのちを支えるために生まれてくる多くの命があることを、忘れてはなりません。
そして、手を合わさずにはおれません。
2017年05月17日【285】