3月16日~あなたの左手の存在とは…
境内の岩ツツジのつぼみが開き、春の兆しが見え始めました。
さて先日、知人の結婚披露宴に参りました。
これから新たな人生を歩み始める若い二人の門出を皆でお祝いしましたが、いつもの通り、披露宴の最後に新郎のお父様が挨拶をされました。
長年クリーニング店を営んでおられるお父様は、出席者全員に謝意を述べた後、
「クリーニングの仕事は、右手でアイロンをかけますが、その右手の行く先には必ず左手があります。左手が右手の行く先の布を正しく伸ばし待たなければ、きれいに洋服のシワを伸ばすことは出来ません。私は夫婦の生活も同様のことが言えるのではないかと思います」と言葉少なに、しかし自信を持って述べられました。
クリーニングのお仕事は、お客さまから託された服を一つ一つ丁寧に仕上げていく、どちらかというとコツコツと、地道で寡黙なお仕事かもしれません。
しかしお父様にとって、長年続けてこられたお仕事の中で感じられた夫婦観が、その右手と左手の関係だったのでしょう。
あうんの呼吸と言いましょうか、多くは語らずとも必ず支え合う関係、自分の人生になくてはならない存在、あるいは一つの物事を達成するためになくてはならない存在。その存在の大切さと関係性を、日々のアイロンを持つ右手とその行く先で待つ左手の関係に見られたのです。
そのご挨拶を拝聴して、私はあらためて自分にとっての左手の存在を顧みることでした。
それは家庭における伴侶のことだけでなく、お仕事をはじめ様々な場面で左手となる人の存在があります。
その人は当たり前のようにいてはくださいますが、決して当たり前ではない存在です。
あなたにとって左手の存在とはどなたでしょう。あらためて顧みるときに感謝の思いもまた、生まれてまいります。
2017年03月16日【281】