6月1日~悲劇起きる可能性を減らすために
お寺の境内には、さわやかな初夏の風が吹いています。
さて、先月二十七日、アメリカのオバマ大統領が戦後七十一年にして、被爆地・広島を訪問し、献花の後、演説を行いました。
オバマさんは、被爆地・広島という所は、「私たちが内省し、私たちが何者なのか、これからどのような存在になりえるのか」を、被爆者の魂の声を聞かせていただき深く考えるところだと言います。
戦争はなぜ起こるのか。それは人間の持つ欲望や、相手の立場や考え方を理解することのない偏った思想、また相手を支配や征服したいという本能があるからだと述べます。
そして原子力爆弾こそが、最も人間性の中にある根本的な矛盾を突きつけるものだと。
それは私たちの考えや想像力、言葉、道具を作る能力、自然を自らと区別して、自らの意思のために変化させる能力といったものこそが、とてつもない破壊能力を私たち自身にもたらしたからだと言います。
人間の生活を豊かにするはずの科学の進歩が、同時に効率的な殺戮の道具に転用されて、計り知ることのできない犠牲者を出してしまいました。
演説はこの後も続きますが、オバマさんが語る内容と、私どもが常々聞かせていただく仏さまの教えと、平和といのちの尊さを願う点では変わりはありません。
オバマさんは、「すべての命は尊いという主張。私たちはたった一つの人類の一員なのだという根本的で欠かさない考え」を、私たち全員で伝えていかねばならないと語ります。
身近なところから核廃絶を語りましょう。身近なところから命の尊さを唱えましょう。
オバマさんが言うように、たゆまぬ努力によって、悲劇が起きる可能性を減らすことはできます。
2016年06月01日【262】