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6月1日~まことの親に遇う
日ごとに気温が上昇し、草木の生長が著しい季節です。
さて、四月より京都の龍谷大学に勤務することになりましたが、この大学では、毎朝、勤行・おつとめをして一日が始まります。
深草キャンパスには顕真館という大きな礼拝施設があって、毎朝、教職員や学生の皆さんが共々にお勤めをして一日が始まるのです。
私もお参りをさせていただくのですが、あらためて有り難いなと思うことは、私たちが仏様にお参りをし、み教えを聞くということは、まことの親の姿に出遇わせていただくことだということです。
ひとりの人間が、人生を生き抜いていくということはとても大変なことです。
学生は学生なりの悩みや苦しみがあります。社会人になると社会人なりの悩みや苦しみを背負わねばなりません。
もし結婚をし、子どもに恵まれたならば、子育ての問題や経済的な問題、家族の問題を背負いながら生きていかねばなりません。
しかも、その悩みや苦しみは、一人ひとりそれぞれに重い問題で、優劣をつけることもできません。
「まことの親に出会う」、つまり仏さまに出遇うということは、そのような悩みや苦しみを背負っていかねばならない私に、いつも寄り添い、励まし、支えてくださる親を、心に確かに感じながら生きるということでありましょう。
この娑婆世界で自分自身が背負った様々な問題は、自分自身で解決していかねばなりません。その悩みや苦しみを即座に解決してくれたり、安易に子に代わって代理人を務めるような親はまことの親ではありません。
悩めるわが子をつねに案じ、時にはよき方向性を示し、時には励まし、時には戒め、時にはともに泣き、その子が挫けずに人生をしっかりと歩んでいけるようつねに寄り添うのがまことの親のありようです。
私たちが毎日手を合わせ、お念仏を称える信仰の中に、そのまことの親を確かに感じることのできる生活が開かれるのです。
6月1日~まことの親に遇う | 2012年05月29日【169】
5月16日~この夏の大きな課題
五月中旬、一年を七十二の気候に分けた表現では「竹笋生」。少し遅い気がします。
さて今月五日の深夜、北海道電力泊原発三号機が定期検査のため停止し、日本の原発五十基すべてが四十二年ぶりに稼働ゼロになりました。
野田政権は、関西電力の大飯原発三、四号機の再稼働を目指していますが、関西の自治体が慎重なこともあってそのめどは立ちません。
一方、原発を稼働させなければ、今年の夏の電力が足りなくなる恐れがあると電力会社や原発容認派は言っています。
新聞やテレビで示される予想される電力の数値は様々で、いったいどれを信用していいかわかりません。しかし、大震災による福島第一原発事故の被害は甚大なものであり、その安全性は徹底的に検証されるべきで、今後の動向を注意深く見守るべきでありましょう。
と同時に、私たちもこれまでの生活の有り様を省みる必要があります。
テレビや冷蔵庫、洗濯機や冷暖房など、私たちはこれまで大型で最新型で、機能性の高いものを好んで使用してきたように思います。スイッチオンの時間も特別に気にすることなく、夏には冷たく冬には暖かく、必要以上に快適に、そして心地さを求めてきたように思います。
それら家庭の中での一つ一つを、家族皆で話し合い、節約節電を真剣に考えることが、この夏の日本人の大きな課題ではないかと思います。
本願寺の大谷光真ご門主さまは、ご法要にてのお言葉で、「今日、人間だけが、しかもその一部の人間だけが資源を貪っていては争いが深まるばかり。節度ある社会、節度ある私の生き方を築かねばなりません」と、おっしゃいました。
原発事故という後世にまで影響を残す大事故を経験した私たちです。動物も植物も人間も、共に生きる地球の一員として、今何が大切でしょうか。
私たちには小さなことからしかできませんが、一人ひとりが真剣に考えねばならないこの夏の大きな課題であります。
5月16日~この夏の大きな課題 | 2012年05月14日【168】
5月15日~あせらず、比べず…。
新年度がスタートし一ヵ月が過ぎました。新入生、新社会人の皆さんは、少し落ち着いたでしょうか。
さて先日、テレビで柔道のバルセロナ五輪金メダリスト古賀稔彦さんが、弘前大学大学院の博士課程を修了し、医学博士の学位を授与されたニュースが流れていました。
古賀さんの論文のテーマは「五月病」です。五月病とは、進学や就職など環境が大きく変わる季節に、新しい環境にうまく適応できず、五月の連休を過ぎた頃から鬱的な状態になることをいいます。
古賀さんは、出身の日本体育大の男子柔道部員を対象に追跡調査を行い、高校三年の時に夏の大会後から練習を休むと、大学入学直後に意欲が低下する可能性があることを突き止め、その研究の結果、「五月病は対処法で改善できる」と言われています。
環境が変わると、無自覚のうちに肉体的にも精神的にも疲れるもので、それに無理に適応しようとして、かえって心身に無理がくるのでしょう。
無理をしない、踏ん張りすぎないことが大切なようです。仏教で言えば、「精進」ということでしょうか。
精進とは仏道修行の一つですが、日常的な言葉で言うと、「あせらず、比べず、コツコツと励みましょう」ということです。
新たな環境に入ると、いろんなことを覚えなければなりません。あせらずにゆっくり、そして誰も完璧にできる人なんていませんから、失敗をおそれず自分のペースで努めましょう。
また新たな環境には、いろんな人がいることでしょう。するとついつい自分と周囲の人と比べてしまうのものです。比べるとつい、あせったり、力んだりします。比べるよりもお互いに心を割って力添えを頼みましょう。
でもコツコツと無理のない範囲で少しずつ励みましょう。休むのも仕事のうちです。
あせらず、比べず、コツコツと…。とても大切なことです。
5月15日~あせらず、比べず…。 | 2012年05月06日【167】